運のいい落とし物
あの~落とされましたよ、と言われて振り向くと男性からハンカチを差し出されます
ハンカチを見ると、私のものではないので、いや違いますョと言うと、あぁすいませんと言って男性は店から出て駅に向かう地下道に消えていきました。
その後 バスを待っていたのですが、さっきから感じるこの違和感、この妙な感じはなんなんだと考えていると、さっきの男性の顔が浮かびます。
んっ?ない、財布がない。ショルダーに入れておいた財布が失くなっている…あの男!…
全力疾走で店に戻るも、私は男が駅に向かって歩いていくのを見ていた本人なのです。
その後は交番で被害届を出し帰宅、腹が立つやら情けないやらで、一人、部屋で大暴れ
ー それから一ヶ月後 ー
傷も癒えてきたある日、都心のあるビルで仕事を終え、同僚の車が駐車場から出て来るのを待っています。
時間が遅く あまりに周りが暗いので、少し目立つところへと思い タクシー乗り場に移動。タクシーは出払っていて問題ナシ
ぼんやりしていると何かが見えます、車道になにかが落ちているようで恐る恐る近づいてみると、財布です。よほど慌てて降りたのか ボールペンやら手帳やら散乱しています
拾い上げ、歩道に戻って立っていると、よからぬ想いが頭にもたげてきました。
だって…
だって…
このあと同僚と一緒に交番に届けましたが、「いやぁこの財布は運がいいですね」などと言う お巡りさんに「そうですね」と私。
もしあの時、違う選択をしていたら…
なにかを試されていた そんな出来事でした
それでは。